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過去編ー大和御門ー 8.大和御門2

last update publish date: 2026-08-20 13:39:49

 ひと悶着の末、朝のルーティーンに出かけたとおるを見送ると、真神マガミ御門みかどの中から姿を現した。

 亨が近くにいると、真神は活動を酷く制限される為、亨がいない間しか姿を現さない。亨がいると声すら聞こえないのだ。

 だから御門は亨が大好きだった。

『昨日の女は中々だったな』

 真神は犬がおやつをもらって満足したような顔で御門に話しかけた。

「あー。ありゃ相当だったわ。素人にするには惜しい霊力な上、腹ン中真っ黒過ぎてよくないものをわっさわさ引き連れてたな。あれでよく正気を保てるもんだ」

 御門は女が忘れていったストッキングを見つけると、指で摘んでゴミ箱に放り投げた。

『しかしおかげで足しにはなった。また見かけたらお願いしたいものだ』

 すました顔で言っているが、尻尾はぶんぶんと機嫌よく揺れている。

 ここひと月ほど付喪神ツクモガミを食っていない真神は、御門の霊力を蝕み始めていた。御門の霊力が尽きると次は命を削られる。

 回避する方法は一つだけだった。悪霊を喰らう事。

 真神の神力の回復には膨大な霊力が必要になる。

 その為、悪霊を食い霊力を集めろと真神
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  • 付喪神狩   人形編 31.名付け

    「名前っつーのはさ、存在を縛るわけよ」 亨が向いたりんごを食べながら、御門は説明をした。「名をつけることで存在を認める。言い返すと名前ってのは存在そのものとも言える。だから名を知ると呪う事ができる。――昔の人間が名を明かさなかったのはそういうこった」 御門が語った篠川夫妻から聞き出した話は、亨の想像を超えていた。 暁が産まれて1年が過ぎた頃、夫婦はある占い師に出会った。 占い師は娘の身を案じる夫婦に、もう1人子供を作り、その子供に戸籍の名とは違う名前をつけるよう言った。 そうする事で産まれた子の生命力が姉の弱い魂を補うだろうと。そして、その名は家族以外が知る事の無いよう、誰にも言ってはいけないとも。 そうして、それから2年後に夫婦は再び子を授かり、まゆみと名付け、占い師の言った事を思い出し真名を宵と名付けた。「あいつらがつけたのは暁と反対の意味を持つ宵だ。占い師に言われたんだと。近い名をつける事で魂の結び付きはより強固になるってな。とんでもねえ話だわ。生命力を分けるどころか、妹に姉の身代りをさせる呪いだったわけよ」 だが、篠川夫妻は占い師の言葉を覚え違えていたのか、勘違いしたのか、反対の名をつけた。 それにより、呪いの形が歪み、生きたいという執念が強かった暁の魂がまゆみの魂を貪り始めたのだ。 「あいつの生きる執念は凄まじかったからな。その執念と、親が知らずにかけた呪いが混じりあったんだろうな。まゆみは暁に食われたんだ」「そんな――それじゃあまゆみさんは」 亨の言葉に御門は軽く肩をすくめた。「子供の頃から喰われてた。まゆみが好きな事をやらせてもらえたってのは暁がやりたかった事だろうよ。そうやって少しずつ浸食されて暁が死んだっつー5年前には完全に喰われてたはずだ。あれはまゆみ――いや、宵という名を奪った暁だ」 亨は目の前が暗くなるような気分だった。 姉との思い出や両親に蔑ろにされていた悲しい過去を話していたのは暁だったというのか。「気にすんな。奴らは嘘をつくもんさ。特に奴の狙いはとーるちゃんだったからな。取り入るためにはなんでもするさ」 御門の言葉に亨は下を向き、「なんで僕なんですか」と吐き出すような声で尋ねた。「とーるちゃんの霊力は特殊だからねぇ

  • 付喪神狩   人形編 30.真名

    「高天原に神留坐す神漏岐神漏美の命以ちて皇親神伊邪那岐の大神筑紫日向の橘の小門の阿波岐原に禊祓ひ給ふ時に生坐せる祓戸の大神等諸々禍事罪穢れを祓い給ひ清め給ふと申す事の由を天つ神地つ神八百万神達共に聞食畏み畏みも白す」  東雲がまゆみを引き付ける間に、御門は祓詞を読み上げた。 御門の体から真神が姿を現す。 真神はその目にまゆみを捉えると、東雲を飛び越えてまゆみの左肩に喰らいついた。「大口真神――」 まゆみはニヤリと笑うと、微動だにせずその牙を受け止めた。「亨さんの霊力はお前を抑えると聞いたけど――事実のようね」『そう思うか――』 真神は不敵に笑うと、いつの間に背後に回っていたのか、まなみの体は御門に抱きかかえられた。「返してもらうぜ――とーるちゃんの霊力」 そう言うと、御門は抱きかかえたまゆみの眉間を人差し指で押さえつけた。「天の瓊矛以て国を鎮む――顕現せしませ――宵!」「お前!なんでその名前を」 術はまゆみの体を縛りあげ、霊力が御門の指を伝って流れ出していく。 御門を振り払おうと体を動かすが、御門の力は強く、体から御門の指に霊力が流れ出すを止められない。「まさか真名を持ってたとはな」 御門はそう言うと、まゆみの肩に嚙みついた。 まゆみの白い皮膚が裂け血が滲む。血液と共に霊力が更に御門の体に流れ込んでいく。亨の霊力を感じ、御門は立てた歯をよりまゆみの肩に食い込ませた。「離せ!私のものよ!――」 急速に失われる霊力を感じ、まゆみは手に持っていたナイフを御門の足に突き立てた。「御門君!」 東雲が叫ぶと同時に、真神がまゆみの肩に再び牙を立てた。今度はその体を貫くと、まゆみの体から黒い靄が立ち、人の形

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  • 付喪神狩   人形編 28.告白

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  • 付喪神狩   人形編 26.帰宅

    『あの者を一人で行かせて良かったのか』 久しぶりに御門の中から真神が姿を現し、気持ちよさげに伸びをしている。「いやお前伸びなんかしても意味ないだろ。霊体なんだから」『気分と言うものがある』 御門のツッコミを軽くいなして真神が言うと、御門は「霊力の無駄使いなんだから出てくんなよ」と呟いた。『お前を見ていると、あの者が大事なのか違うのかよくわからんな』 真神の言葉に御門はゆっくりと立ち上がると、部屋を出てリビングに向かった。 リビングではミケさんが真神を見るや、毛を逆立てて威嚇している。「ほらほらミケさん。喰われたくなかったらどっか行っちゃってよ」『霊力の足しになろうとも、猫など喰っては腹を壊すわ』 ソファの横に腰を下ろすと、長い尻尾でミケさんを払って転ばし、ミケさんもまたその尻尾に嚙みつこうと追いかける――じゃれあって遊んでいるようにしか見えない光景を、御門はキッチンの換気扇の下でタバコに火をつけながら眺めていた。 ――どう見ても犬と猫だろ。あんなもんが神とか日本おかしすぎるだろ。 タバコを一本吸い終わる頃には、ミケさんも飽きたのか姿を消しており、真神はその大きな体をリビングの床にのびのびと伸ばして寛いでいた。「とーるちゃんが付けて帰ってきたあの匂い。人形と同じ霊力を感じた」 ソファに腰掛けて御門が言うと、真神は片目だけを開けて御門を見た。「それだけじゃない。あの娘もだし篠川の夫婦もだ」 家族だから匂いが付くのは当然と言えば当然だが、何か腑に落ちないと言った様子で、御門はソファに体を埋もれさせた。 真神の姿が御門の中に消えるのを見て、御門は亨の帰宅を察した。 亨が出て行って2時間ほどしか経っていない。御門はニヤリと笑って「お帰り」とリビングに入ってきた亨に声をかけた。「その様子じゃ今日も童貞は捨ててない感じだねぇ」 御門の揶揄いにも反応せず、亨は呆然とした様子で部屋に入ろうとして、御門に抱き止められた。「ちょっと、無視とか酷くない?」「――あ、御門さん。すみません。僕――今日はそっとしておいてください」 そう言うと、亨は御門の腕をそっと解いて自室に入ってしまった。 いつもの亨ではないことは、御門でなくてもわかる。 ――童貞は捨ててはないけど……軽く喰われたか。 御門は亨に沁みつい

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